ポリウレアはスピーディーに硬化する、強靭なコーティング剤です。塗布面に付着した瞬間から反応が始まり、数秒から数十秒で乾燥状態となります。実用強度までは数分から数時間で達するため、工期を大幅に短縮できるだけでなく、高い耐摩耗性、耐衝撃性、優れた伸縮性、防水性、耐薬品性などの特性があり、建築・土木インフラから産業・車両に至るまで、幅広い分野で使われています。一見、万能のように見えるポリウレアですが、その長所が逆に弱点となる場合も少なくありません。ウレア系コーティング剤のレジリエンスウレアはこの弱点を解決していることから利用分野が拡大しています。
ポリウレアとはどんなコーティング剤?
ポリウレアには防水や防食、耐摩耗や耐衝撃、防錆といった特徴があります。具体的にどんな特徴があり、どんな場所で、どんな用途で利用されているのでしょうか。

速い硬化スピードは工期を短縮
ポリウレアは専用のスプレーガンで2液を高温・高圧で混合・噴射すると、塗布面に付着した瞬間に反応が始まり、数秒から数十秒で触っても手につかない状態まで乾燥します。硬化スピードが速いため、垂直な壁面や天井に吹き付けても塗料が垂れないほどです。また、数分から数時間で実用強度に達するため、施工後すぐにその場所の使用を再開できます。
屋根や屋上、駐車場では防水・防食・耐摩耗性能を活かす

ポリウレアが利用される事例で最も身近なのが、工場のスレート屋根や傾斜のない平屋根、屋上スペースにおける防水を目的としたコーティングです。また、ショッピングモールなどの屋上駐車場のような場所では防水だけでなく、車両の走行によって発生する摩耗への耐性から、ポリウレアによるコーティングが行われます。このほか、工場の床や、地下ピットのような場所、一般的な住宅建材ではスレート屋根、木材、サイディングボード、バルコニーの床などの木部への適性も優れており、こういった場所の防水・防食にもコーティングにポリウレアが使われています。
安全性向上や長寿命化のためにも利用されるポリウレア
飲料水タンク、受水槽、薬品タンク、浄水場、下水処理施設のライニングと呼ばれる内側のコーティングに使われます。ポリウレアによる塗膜は耐薬品性能もある、継ぎ目のない防水層となり、設備の安全性を高めることができます。
一方、橋やトンネル、ダムなどではポリウレアの防水性能、伸縮性を活かし、ひび割れが発生したコンクリートの剥落防止や、水の侵入を防ぐための保護・防水材として利用されており、インフラの長寿命化に貢献しています。また、一般住宅のガラスに塗布することで、破損した場合の破片飛散を抑制することもできます。
万能ではないポリウレア、その弱点は?
ポリウレアの性能や特徴を見ていくと、万能なコーティング剤だと思われるかもしれません。しかし、ポリウレアにも弱点があります。一つひとつ見ていきましょう。
ポリウレアの弱点1:施工難易度の高さ
ポリウレアはイソシアネートとアミンという2つの液体を混合させて利用します。比率を1対1で行われなければならないのですが、正確な比率で、なおかつ約60~80℃の高温、約150~240気圧で混合し、専用のスプレーで塗布する必要があります。この条件を守らなければならないため、施工には経験やノウハウが必要です。
また、この2液が反応する速度は極めて速く、塗布から数秒から数十秒で乾燥してしまいます。タレが少ないという長所がある反面、施工ミスが許されません。スプレーで塗布する際の均一性や膜厚の管理にも高度な技術が求められます。
ポリウレアの弱点2:下地からの剥離防止にプライマーが必要
ポリウレアは下地から剥がれるのを防ぐためにプライマー(下塗り塗料)を使用しなければならないというのも弱点として挙げられます。ポリウレアはコンクリート、金属などの下地となる素材との密着性を確保することが難しいという課題があります。直接塗布した場合、施工から時間が経つと、剥離しやすいという傾向があります。
また、下地が「ジョリパッド」という意匠性外装材を利用している場合、その特徴である立体的な模様が損なわれてしまうため、利用できません。
ポリウレアの弱点3:安価な製品ではUVで変色も
「芳香族(ほうこうぞく)ポリウレア」は安価なのですが、紫外線(UV)によって変色してしまうものもあります。そのため、変色から守るためにはトップコートが必要となります。変色しない「脂肪族(しぼうぞく)ポリウレア」もありますが、一般的なポリウレアよりは高価です。
ポリウレアの弱点を解決したレジリエンスウレア

ポリウレアの持つ強靭性、防水や防食、防錆性、耐摩耗や耐衝撃性、伸縮性といった性能を上回るだけでなく、ポリウレアの弱点である施工の難しさや下地が必要といったことを解決したコーティング剤が、「回復力」「しなやかさ」を意味する言葉「レジリエンス(Resilience)」を製品名とするレジリエンスウレアです。
施工不良のリスクを抑制
従来のポリウレアは2液を混合するため、計量ミスや混錬不足発生の恐れがありました。しかし、レジリエンスウレアは独自技術で硬化剤成分を内在させるマイクロセパレーションテクノロジー、ミクロ相分離技術の開発によって1液化されています。そのため、施工の準備に際して、ノウハウなどを不要です。
また、数秒から数分で硬化してしまう速硬化性と、専用の高圧・高温スプレーでしか塗布できなかったこともその施工を難しくしていました。この点もレジリエンスウレアは解決。硬化反応を制御することによって、ローラーや刷毛で施工できる適切な硬化時間を確保しています。そのため施工に際して、ポリウレアのような特別な経験やノウハウは不要です。
高耐候性でUVによる変色を抑制
ポリウレアは芳香族系の場合、紫外線(UV)による経年劣化で変色が避けられませんでした。そのため、高価な脂肪族系ポリウレアを使用するか、耐候性のあるトップコートが必須となっていました。レジリエンスウレアはこの弱点も解決しています。第三者試験機関による40年相当、2,000時間のUV試験においても高耐候性を証明しています。
フクレや剥離の原因となる透湿性の低さ
ポリウレアはその塗膜が緻密すぎて壁内部の湿気を逃がしにくく、フクレや剥がれの原因になるリスクがありました。この点もレジリエンスウレアは外部からの水の侵入を防ぎつつ、内部の湿気を徐々に外部に逃がす「透湿性」があるため、塗膜内部に湿気が溜まることによるフクレや剥がれを抑制します。
ポリウレアにはない遮熱効果
レジリエンスウレアの塗装皮膜にはポリウレアにはない遮熱効果があります。たとえば工場の金属折半屋根の場合、屋根の内面温度を11℃低下させたというデータがあります。屋根の内面温度を11℃低下させると室内温度は2℃低下させることができます。地球温暖化対策の一環にもなるといえるでしょう。
レジリエンスウレアは高性能・多機能なコーティング塗料

レジリエンスウレアは、ポリウレアの強靭性、防水性といった高性能を維持しつつ、弱点となっていた施工の難しさや、下地によっては利用できないこと、安価なものはUVによる変色という経年劣化といった問題を解決したコーティング塗料です。またレジリエンスウレアはローラー・刷毛で塗れる1液化に成功していること、硬化スピードを制御したこと、さらにはフクレや剥離を防ぐ透湿性が付与されたこと、紫外線の影響を抑制する耐候性、加えてポリウレアにはない遮熱効果も追加したことによって、利用範囲を拡大しています。
