工場屋根の遮熱問題は現場だけでなく、経営側も切実なテーマとなっています。工場の屋根は夏場になると表面温度が上がり、屋根裏に夏がこもってしまい、それに伴って室内温度は外気温度より高くなってしまうことが少なくありません。そうなると作業者が熱中症になってしまうリスクが増大します。温度を下げるために利用される空調のコストは経営側にとって大きな負担となります。そこで注目されているのが遮熱。さまざまな観点から、夏が来る前に熱中症対策を済ませることが重要です。
作業者、経営者双方にリスクとなる暑さ・熱問題

工場の屋根として現在普及しているのは金属のガルバリウム鋼板による「折板屋根」や、セメント系の「スレート屋根」など。重厚な工場や研究施設では「ALC屋根」や「RC屋根」を採用しているところもあります。工場屋根の中でも「折板屋根」は軽量で施工が早いことやコストが安いといったことから、最も普及している屋根だといっても過言ではないでしょう。しかし、この「折板屋根」、メリットは多いのですが、デメリットも少なくありません。デメリットの一つが暑さ・熱の問題です。作業者、経営者双方にとってリスクとなります。
工場の熱中症による死傷災害は深刻
厚生労働省が2025年に発表した「令和6年(2024年) 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、職場での熱中症による死傷者数(死亡・休業4日以上)は年々増加しています。2024年に過去最多の1,257人となっており、統計開始以来の最多記録になってしまいました。この統計によると、熱中症による職場の死傷者のうち約4割が「建設業」と「製造業(工場含む)」で発生していると報告されています。
工場で熱中症が発生しやすい要因としては屋根の輻射熱による高温・高湿の屋内環境にあることや、大空間で空調が届きにくいということ、その上、重作業や体力負荷が大きい業務が多いことなどもあるとされています。
工場やオフィスなど職場の熱中症対策は2025年6月に義務化
これまでも「熱中症対策の指針」や「ガイドライン」はありました。しかし、熱中症の大幅な増加、熱中症の予防が不十分なままだと重大な労災につながるという現状などを鑑みて、2025年6月、職場の熱中症対策を義務化した改正労働安全衛生規則が施行されました。この改正では次の3点が義務化されました。
・熱中症予防のための体制整備
・作業時の対応手順の作成
・労働者を含む関係者への周知
対象となるのはWBGT(暑さ指数)が28℃以上、または、気温31℃以上の環境において、次のような作業内容です。
・連続1時間以上の作業
・1日合計4時間を超える作業
この改正労働安全衛生規則では事業者が体制整備・手順作成・関係者への周知などの熱中症対策を実施しなかった場合、6カ月以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金が課せられる恐れがあるほか、作業停止命令、建物や機械の使用停止・変更命令が科される可能性もあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf
職場における熱中症対策リーフレット(厚生労働省)
工場屋根を遮熱するには

工場の熱問題の主な原因は工場屋根だといわれています。工場屋根の多くは折板屋根と呼ばれるガルバリウム鋼板を材料とした金属屋根であり、熱対策を行っていないと、室温は35から40℃、天井付近になると45℃を越えます。加えて作動させている機械からの発熱もあります。こうした作業環境は珍しくありません。義務化されているからという観点からだけでなく、作業者の労働安全確立、快適な労働環境の創出による作業効率の向上、さらには空調コストの低減を図るためには熱対策が重要です。工場屋根の遮熱には次のような対策が考えられます。
最も多いのは遮熱塗料の塗布
工場屋根の遮熱対策で最も多いのは太陽光を反射し、屋根表面温度を下げる遮熱塗料の塗布です。工事が比較的簡単であることや稼働中の工場でも施工しやすいこと、コストが比較的低いというメリットがある一方、汚れで反射率が落ちると、遮熱効果もそれに伴い失われていくこと、数年ごとに塗り直す必要があるといった注意点があります。
屋根の裏側に遮熱シートを施工
塗装が難しい工場屋根ではアルミ蒸着などの輻射反射材を屋根裏に施工という方法で遮熱対策を行うケースがあります。しかし、隙間なく施工しないと効果が落ちることや、結露対策の実施が必要といった注意点があります。
二重屋根やカバー工法などによる対策
既存屋根の上に新しい屋根をかぶせる二重屋根やカバー工法は遮熱効果に加え、断熱効果もあるのですが、コストが高いこと、さらには工場の建物の構造計算が必要になる場合もあるため、施工は大掛かりなものになってしまう可能性があります。
このほか、屋根への散水で蒸発潜熱を利用するといった方法もありますが、大量の水や散水装置の定期的なメンテナンスが必要になります。
レジリエンスウレアで工場屋根を遮熱
工場屋根への熱中症対策で注目されているのが、高い遮熱効果を持つレジリエンスウレアです。レジリエンスウレアはポリウレア樹脂をベースにした塗料であり、耐用年数や耐候性能などでも、一般的な遮熱塗装とは一線を画す性能を持っています。
遮熱塗料としてのレジリエンスウレア

レジリエンスウレアを遮熱塗料として折板屋根に施工した場合、屋根の内面温度を11℃低下させたというデータがあります。計測条件にもよりますが、内面温度が11℃低下すると室内温度は約2℃低下します。室内温度が1℃変わると消費電力は約10%変動しますから、単純計算で2℃低下させることができれば、消費電力も20%削減できることになります。レジリエンスウレアを遮熱塗料として利用することで、環境負荷の低減に貢献できるだけでなく、空調にかかる電気代の削減にもつながります。
また、第三者機関によるスーパーUV試験機を用いた試験で、レジリエンスウレアは2,000時間の暴露後も良好な塗膜を維持し、年数換算で約40年に相当する結果を出しています。架橋密度が非常に高いため、塗膜表面が緻密で汚れが定着しにくいという特徴もあり、一般的な遮熱塗料と比較して、メンテナンス回数の削減を図れることから、電気代の削減と合わせて大幅なコストダウンも期待できます。
レジリエンスウレアによる遮熱塗装は長寿命化という効果も
折板屋根の材料となるガルバリウム鋼板はメッキ加工されています。耐久性、耐食性や耐火性、耐熱性などが高く、長寿命ですが、定期的なメンテナンスを怠るとこのメッキに含まれる亜鉛が溶けて酸化し、白サビが発生します。また塩害や薬品環境に弱く、沿岸部や化学工場、食品工場では劣化が早まり、それに伴って白サビから腐食性のある赤錆への進行も加速します。
レジリエンスウレアによるコーティングは高い耐久性と耐候性、さらには防水性、耐熱性、耐食性、耐薬品性などを高めるという特徴があります。レジリエンスウレアを工場屋根の遮熱塗料として利用した場合、強靭な防水塗膜が形成されます。塗膜には高い伸縮性と追従性があるため、表面に傷がついても、水の侵入を防ぎます。塗膜の内側に溜まってしまう湿気を徐々に抜くという特性もあり、こうした補強材としての性能は遮熱による熱中症対策に加え、工場の長寿命化というメリットももたらします。
工場屋根はレジリエンスウレアで遮熱を
2025年6月の改正労働安全衛生規則施行によって、作業者の安全性を高めるだけでなく、快適な作業環境の創出といった観点から工場の熱中症対策は急務となっています。その一つの方法として挙げられるのが工場屋根の遮熱。多機能塗料であるレジリエンスウレアによる工場屋根のコーティング塗装は遮熱効果のみならず、空調コストの低減、環境対策、さらには施工する建物の長寿命化も期待できることから、注目が高まっています。
