工場が安全、安心して、快適に働ける場所であり続けることは働く人のモチベーションを高めるだけでなく、生産の効率化にもつながるといえるでしょう。そのためには定期的なメンテナンス、さらには耐用年数を考慮しての建て替えなども行っていく必要があるでしょう。しかし、工場の定期的なメンテナンス、建て替えは大きな出費となります。そこで工場の耐用年数延長を図っていくことがものづくり企業にとってコストダウンのカギとなります。解決策として注目されているのが、次世代塗料であるレジリエンスウレアによる建材の塗膜処理です。
工場の耐用年数は何年?
製品に製品寿命があるように建物である工場にも寿命、耐用年数があります。耐用年数は大きく、税法からみた償却期間としての耐用年数の「法定耐用年数」、工場が物理的に機能できる、モノを生産できる状態にある期間の「物理的耐用年数」、そして、稼働することによって収益を上げることができる状態にある「経済的耐用年数」に分けることができます。それぞれの耐用年数には目的や判断基準が異なるため、実際に施設を運営・管理する際には、これらの年数を考慮して計画を立てることになります。
税務上での計算基準となる期間が法定耐用年数
法定耐用年数は工場の建物を資産、税務という観点から見て、減価償却の期間として、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められた年数です。国税庁は「主な減価償却資産の耐用年数表」を公表しています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
この中から工場についてを抜粋してご紹介します。工場については「構造・用途」で耐用年数は異なります。
- 木造・合成樹脂造のもの-15年
- 木骨モルタル造のもの-14年
- 木骨モルタル造のもの-14年
- 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造のもの-38年
- れんが造・石造・ブロック造のもの-34年
- 金属造のもの(4㎜を超えるもの)-31年
- 金属造のもの(3㎜を超え、4㎜以下のもの)-24年
- 金属造のもの(3㎜以下のもの)-17年
これは、税法に基づき、固定資産の償却費を計算するために国が規定しているもので、あくまでも税務上の計算基準であり、実際の使用可能期間の年数ではないことに注意が必要です。
摩耗、消耗などの劣化状況から見る期間が物理的耐用年数
工場は定期的なメンテナンスを行っていたとしても、経年劣化を避けることはできません。物理的耐用年数は経年によって発生する工場の建屋自体、あるいは建屋を構成する部材などが劣化や摩耗、損傷などをみて決まってきます。工場全体を見て、安全・安心して、継続的に使用できなくなるのが物理的耐用年数になります。
経済的耐用年数は安定した生産性で利益が出せる期間
経済的耐用年数は工場を使い続けることで得られる利益と、工場のメンテナンスや修繕にかかるコストとのバランスで決まる期間です。メンテナンスや修繕を払っても、安定稼働して利益が出せるのであれば継続使用できますが、安定稼働させるためのコストがかかって、利益が出なくなってしまっていれば、立て替えを検討します。
ものづくりを支える工場が直面する課題
工場の安定稼働、環境負荷の低減、ランニングコストの削減はものづくり企業において、経営課題となっています。そのためには快適な現場環境を創出し、設備の定期的なメンテナンスを行っていかなければならないでしょう。省エネへの取り組みも急務です。
工場の耐用年数からみた問題点
工場の屋根や外壁には遮熱性や防水性、耐候性、防錆性が求められます。そのため鋼板折半屋根には資材として、錆びにくい建材のガルバニウム鋼板が利用されている例が多く見られます。ガルバニウム鋼板は定期的なメンテナンスや修繕を行うことによって、物理的耐用年数を伸ばすことが可能です。しっかりとしたメンテナンスを行うことで耐用年数は25年から35年と言われています。しかし、経済的耐用年数という観点から見ると、もっと短くなるかもしれません。
躯体の耐用年数が30年以上の場合、3回は改修工事が必要
ガルバニウム鋼板は一般的にはシリコン塗料を塗布します。塗料は5年ほどで劣化が現れ始め、10年目になると、色褪せや、あるいはチョークを引いたような粉が浮き出てくるチョーキング現象などが発生します。そのまま放置し、塗膜が劣化し続けていけば、苔やカビが発生します。
例えば屋根のメンテナンスを行う場合には10年に1度の改修工事が必要となります。躯体の耐用年数が30年以上とした場合、3回は工事費用が発生します。3000㎡の費用を見てみましょう。
- 塗装工事単価:3,000円/㎡、足場代:1,000円/㎡
- 工事代金:3,000円×3,000㎡=900万円
- 足場代:1,000円×3,000㎡=300万円
1回あたりの工事代金は1,200万円となります。30年以上稼働させるとなると3回の工事を行うので3,600万円の工事費用がかかります。また、30年以上の稼働では設備の更新も必要になるでしょう。生産効率、利益率など、ランニングコストをトータルで考えると30年よりも前に工場を建て直した方が良いということになるかもしれません。
レジリエンスウレアで物理的、経済的耐久年数を延長
しかし、工場の物理的耐用年数を伸ばし、メンテナンスの回数を低減させることができれば、経済的耐用年数も伸びることになり、ランニングコストも下げることができるでしょう。そこで注目されているのが、次世代塗料のレジリエンスウレアです。
レジリエンスウレアとは?
レジリエンスウレアはポリウレア樹脂塗料です。耐候性は第三者機関が紫外線強度を上げた促進耐候性試験機であるスーパーUV試験機を用いた試験を行い、約30年という期待耐用年数の結果数値を出しています。レジリエンスウレアには高強度、高耐久性、高耐熱性、高耐食性、高耐薬品性のほか、低汚染性などの特性もあり、建設物への塗装で普及拡大しています。
レジリエンスウレアは30年に1度で
躯体の耐用年数が30年以上の屋根材にガルバニウム鋼材を使い、レジリエンスウレアで塗装した場合、工事費用は1回だけになります。3,000㎡の費用を見てみましょう。
- 塗装工事単価:6,000円/㎡、足場代:1,000円/㎡
- 工事代金:6,000円×3,000㎡=1,800万円
- 足場代:1,000円×3000㎡=300万円
1回あたりの工事代金は2,100万円となります。一般的に利用されるシリコン塗料の場合、3回で3,600万円ですが、レジリエンスウレアで塗装した場合は2,100万円。30年で考えると1,500万円のコストダウンが可能になります。
環境負荷の低減にも
レジリエンスウレアの塗装皮膜には遮熱効果があります。工場金属折半屋根工場の場合、屋根の内面温度を11℃低下させることができます。内面温度は11℃低下させると室内温度は2℃低下させることができます。大手空調機メーカーや電力会社のインターネットサイトによると、エアコンの設定温度は消費電力に大きく関わっており、設定温度を1℃下げると約10%、2℃下げると約20%、の電気代の節約になるとされています。一般的3000㎡の金属屋根工場の年間エアコン電気代の20%、160万円の削減が可能になります。レジリエンスウレアは生産コストの削減のみならず、環境負荷の低減にも貢献することになります。
レジリエンスウレアは責任施工業による施工が必須
レジリエンスウレアの耐候性は膜厚によって差が出ることが、実験で確認されています。そのため、性能・被膜効果をフルで発揮させるためには責任施工業者による施工と膜厚管理が重要となってきます。レジリエンスウレア協会のウエブサイトで各地の会員企業が紹介されています。
工場の外壁や屋根の塗装をレジリエンスウレアで
レジリエンスウレアが持つ高強度、高耐久性、高耐熱性、高耐食性、高耐候性といった特性から、工場の屋根材や外壁の塗装に利用した場合、建材の耐用年数を伸ばすことが可能になります。このことはものづくり企業の現場となる工場における課題、安全性や快適性の維持だけでなく、経営課題のランニングコスト削減、さらには地球環境の保全への貢献となる環境負荷低減も実現することになります。工場だけでなく、住宅用建材の塗装コーティングでもレジリエンスウレアの利用が広がっています。ただし、レジリエンスウレアの塗装工事はどんな企業・業者でもできるわけでありません。その性能をフルに発揮させるためには膜厚管理が行える責任施工業者による施工が重要となります。