南海トラフ地震という言葉、最近、発生した地震に関連するニュースでも話題になっていたので知っている方が多いのではないでしょうか。南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域として過去に大きな被害をもたらしてきた大規模地震です。これまでこの地域では100年から150年の周期で大規模な地震が発生しており、次の発生も近いのでは、と言われています。大規模な地震が発生した際、いかに安全を確保するのか。そこで注目されているのが、レジリエンスウレアです。
規模の大きい地震が多発、深刻な被害状況も
宮崎県の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が、今年8月8日16時43分頃に発生しました。この地震の発生場所が南海トラフ地震の想定震源域となっていため、大規模地震発生の可能性が高まっていると考えられ、国はこの日の19時すぎに「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。ニュースを見た多くの人々が、不安を覚えました。その後、この情報は9月6日に解除されましたが、多くの学者や評論家の方々が南海トラフ地震について、将来、発生の可能性があると解説されています。巨大地震に対する備え、防災についての意識を高めることがもしもの時の被害を最小限で食い止めることになります。
令和6年能登半島地震では全壊8,789棟、半壊も18,813棟
南海トラフ地震に限らず、近年、規模の大きい地震が多発し、その被害は小さくありません。気象庁のまとめによると、令和3年(2021年)2月13日の福島県沖地震はマグニチュード7.3で震度6強。住家全壊 69棟、住家半壊729棟、住家一部破損19,758棟などの被害が出ました。また令和4年(2022年)3月16日の福島県沖地震はマグニチュード7.4で震度はやはり6強。住家全壊217棟、住家半壊4,556棟、住家一部破損52,162棟などの被害が出ています。
最近では今年(2024年)1月1日に石川県能登地方で発生した、マグニチュード7.6、震度7を記録した令和6年能登半島地震の被害が最も大きく、住家の被害だけ見ても、全壊 8,789棟、半壊 18,813棟、一部破損 83,154棟などとなっており、能登地方は半年以上経っている現在も復旧・復興の取り組みが続いています。
防災意識を高めることが重要
こうした状況を背景に、防災意識を高めることが重要になっています。建物では被害を抑制するための免震装置や制振装置の導入、災害に強い建材の採用なども進んでいます。また、大規模な地震が発生した際、避難経路を明確にしておく、非常用品の場所を認識しておくなど、安全に避難できるようにするための対策が家庭レベルでも行われています。
大規模地震の被害ではガラス飛散に注意
窓ガラスは建物を美しく見せる建材ですが、割れて飛散するようなことがあれば、その鋭利な破片は人に大きな怪我を負わせてしまう可能性があります。建物にガラスが多く利用されている都心部で大規模な地震が発生した場合、その室内にいる人だけでなく、周辺を歩いている人に対しても、ガラス飛散がリスクとなってしまいます。
実際、最大震度6弱を観測した2005年の福岡県西方沖地震では、ビルの窓ガラスが数百枚割れて落下しました。ビルに囲まれた都心部では、常にこうした想定外の危険がつきまといます。
日本建築防災協会は危険な窓ガラスの改修を紹介
日本建築防災協会が発表している「窓ガラスの地震対策の要点」によると次のような窓ガラスが危険であり、対策の必要性がある、としています。
- 硬化パテ止めのはめ殺し窓
- 大きなガラスのはめ殺し窓
- 隅部がガラス同志のつき合せになっている窓
- 三連以上の連続した窓
- 古くて腐食した木や鉄製のサッシ
- 腰壁が低い窓
日本建築防災協会は「窓ガラスの地震対策の要点」の中で窓の改修方法として、次のような対策方法を紹介しています。
- ガラス面に飛散防止用フィルムを貼る
- 合せガラス、網入りガラスに取り替える
- 外壁前面を新しくする
- 古い枠を残してひとまわり小さい安全な窓を入れる
- 枠ごと古い窓を外して新しく安全な窓をつける
- 古い窓の外側に新しく安全な窓をつける
大規模な改修工事を必要としないことから、ガラス飛散防止用フィルムやガラス飛散防止用シートを貼る方法が主流となっています。しかし、このガラス飛散フィルムやシートは網入りのガラスや型板ガラス、すりガラスなど凹凸があるガラスに使用するのが困難でした。
そうした問題を解決するため、塗布することによってガラスの強度を向上させるという製品が普及してきています。
ガラス飛散対策に新たな選択肢がレジリエンスウレア
新たな方法として普及してきているのが次世代型のポリウレア樹脂塗料であるレジリエンスウレアによるガラスのコーティングです。レジリエンスウレアには防弾チョッキにも使用されているというウレア樹脂の強靭性、強靭でありながら、柔軟さもあり追従性に優れているという特徴があります。
レジリエンスウレアは従来困難だったガラスでも
レジリエンスウレアは塗料であり、追従性もあるため、従来のフィルムやシートは網入りのガラスや型板ガラス、すりガラスなど凹凸があるガラスに使用するのが困難だった場所でも使用可能です。
加えて、レジリエンスウレアには架橋密度の高さによって汚染物質の定着を防ぐ超低汚染性で、ガラスを清掃するコストの低減を図ることができます。また、第三者研究機関によるスーパーUV2000暴露試験ではレジリエンスウレアでコーティングされた塗膜は良好な状態を維持し続け、2000時間、年数換算で約40年という期待耐用年数が確認された超耐候性といった特徴もあります。メンテナンスコストが塗膜の経年劣化が少ないため、メンテナンスコストの抑制も可能だと言えるでしょう。
レジリエンスウレアによるコーティング、最大の特徴は透明性
ガラスには透明性という特徴があります。この透明性を活かしたデザインという観点からも、建物を彩る建材として利用されている側面があります。レジリエンスウレアは高い透明性があり、ガラスのコーティングに利用しても、コーティングする前とほとんど変わらないので、景観に与える雰囲気にも影響を与えないでしょう。一般の方が見ても塗布された部分に気が付かれることはほとんどないといえます。
レジリエンスウレアのコーティングは施工不良発生を抑制
レジリエンスウレアは特殊変性させたポリウレア樹脂による1液湿気硬化型のウレア塗料です。従来の2液型のウレア樹脂塗料の課題となっていた施工不良発生を抑制することができます。ガラスの防災建材化を図るために行うコーティングで、施工不良の発生はその安全性に影響を及ぼすことになります。施工業者が扱いやすい塗料であることは重要な要素となります。
レジリエンスウレアでガラス飛散を防止
自然災害がふるう猛威は年々、巨大化しています。そのため、ガラスも厳しい環境に直面します。地震以外にも台風の強風でガラスが破損し、飛散してしまったという事例も数多く発生しています。次世代型ポリウレア樹脂塗料のレジリエンスウレアはガラスの透明度を損なうことなく、強靭製を高めます。防災能力を向上させるだけでなく、耐候性や耐久性、耐熱性、防水性などがあることに加え、架橋密度の高さによって塗膜表面が緻密で、汚染物質の定着を防ぐという効果もあることから、建物のメンテナンスコスト抑制にも期待できます。今後、レジリエンスウレアは防災建材の新たな選択肢となっていくでしょう。